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大阪肥後橋のTailor Armory

Tailor Armory

ベントのしつけ糸について

皆様こんにちは。肥後橋の小さな仕立屋Tailor Armoryの森田です。

3月の就活解禁、4月の新入社と街中でリクルートスーツ姿の方を見かけることが増えました。

さて、そんな中、若い人に限らずですがジャケットやコートのベント(裾のスリット)をしつけ糸で留めたまま着ている人をよく見ます。

ブログやYouTubeなどの着こなし指南記事でよく「切ってから着ましょう」とか「お店の人に切ってもらいましょう」とか書いてあるのを見ます。

売り手側の私からすれば、何故お店の人が切らずに渡すのか、甚だしく疑問です。

そもそも何故しつけ糸で留められているのか。

スーツに限らず洋服は、前後の身頃、袖、襟、ポケット等パーツごとに裁断され、しつけ糸で仮留めしながら縫い合わせていきます。

そうして縫製しながら順にしつけ糸をほどいていき、最後にベントやポケットはしつけ糸を残しておきます。

ベントのしつけ糸を残すのは店頭の現場に輸送する間にひっかけたりしないようにです。

実際、縫製工場の人に聞くと、ハンガーボックスで送る間にベントが段ボールに引っかかって傷がついたことは過去にあったそうです。

つまりしつけ糸が必要なのは「縫製」と「物流」の段階までで、「陳列」する時にはもう切っておくべきなのです。

本来お客様が存在を知る必要もないと思います。

私は昔から店頭に並べる時には全て切っていました。

「型崩れを防ぐためにベントのしつけ糸は着る時まで残している」という声もありますが、ハンガーにかけている間に型崩れするような服はそもそもおかしいでしょう笑

よほどハンガーが合っていなかったり保管の方法が悪ければ型崩れもするでしょうが、それはもはやしつけ糸は関係ありません。

ちなみにサイドのポケットに関してはものを入れない方が綺麗な為、「入れさせない」為にしつけ糸を残して着る場合もあります。