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大阪肥後橋のTailor Armory

Tailor Armory

オーダースーツという商品

皆様こんにちは。肥後橋の小さな仕立屋Tailor Armoryの森田です。

数日前に、妻と久しぶりに映画でも観ようかとなり、子どもたちが寝たあとに「オデッセイ」という映画を観ました。

火星の有人探査計画の任務中に事故に遭った主人公が、仲間から死んだと判断されてしまい、たった一人置き去りにされた火星で植物を育て助けが来るまで孤軍奮闘するという話です。

さすがハリウッド超大作という感じでスカッと楽しめる内容なんですが、私が特に共感したのは、何年もの間火星でたった一人で過ごす主人公が、去っていったクルーの持ち込んでいた音楽コレクションをかけて、歌い踊りながら生き延びるところです。

そのコレクションというのが70年代ディスコミュージックばかりで、ドナ・サマーの「Hot Stuff」とかABBAとかで、「今世紀の音楽はないのか!?」「船長の趣味は最悪だ。」と言いながらかけるんですよね(笑)

私も、音楽をかけながらたった一人で毎日店にいるので(ひっきりなしお客様が来る店でもないので)、口ずさんでるつもりが割と大きめの声量で歌ってたりします。独り言も多いです。

別に私は、誰に置き去りにされたわけでもないんですが(笑)

さて、お店についてよく訊かれることの一つに、「どういう層をターゲットにしているのか。」というものがあります。

お客様を選ぶような身分ではないのでどのような方でもウェルカムなのですが、マーケティング的な観点からは当然、事業の構想段階でターゲット層のペルソナ設定は行なっています。もしご興味があればインスタグラムに初期の事業計画書を抜粋して載せていますので、ご覧ください。

そこに書いてあるターゲットに少し書き加えるとすれば「スーツをオーダーしたことがあるけれども、仕上がりに満足していない人」という層も対象となろうかと思います。

仕立てのグレードと価格の違いについて

というブログでも少し触れましたが、

オーダースーツというのは実は新規参入障壁の低い事業です。

よろしければいちど「オーダースーツ」「開業」「起業」などのワードで検索してみてください。「未経験でもオーダースーツ起業!」とか「副業でスーツスタイリストデビュー!」といった謳い文句の広告が出てくると思います。

既製品の販売と違い在庫を抱えないので、店を構えて固定費をかけて起業せずとも、サイズゲージ(採寸用のサイズ見本)と生地見本さえあれば出張採寸で受注はできます。最低限の採寸知識を身につければ、縫製工場の販売代理店のような形で誰にでも始められます。

「オーダースーツ」とひとくちにいっても当然、仕立てにかかる工数や芯地などの副資材の質、元々のパターン(型紙)の完成度の違いなどによってピンキリです。また採寸に関しても、袖丈・着丈等の数ヶ所をベースのサイズから調整する程度で済ませるのであれば、それだけコストは下げられますし、始めるのも簡単です。

「高級オーダースーツが低価格で!」というような一読しておかしな打ち出しが成立してしまうのはそうしたところからです。

決して「スーツ」を「オーダー」するから高級なわけでもいいものになるわけでもなく、それでは既製品でも数十万するスーツがあることとの整合性がとれません。ちなみにトランプ前大統領が着ているスーツがまさにそうで、既製品で50~100万円程度するブランドのものだそうです。

スーツの質とそれに伴う価格は、前述した通り仕立てにかかる工数や芯地などの副資材、元々のパターン(型紙)の完成度の違い、そして生地に左右されるものなので、単に工程を簡略化したオーダーであれば在庫を抱えないぶんむしろ既製品より安くできるのは道理です。

私が「オーダースーツ」という言葉を、便宜上必要な時をのぞいてあまり使わないのもこうしたところからです。たぶんこのブログで過去最多使用しました。(SEOやタグ付けでは使っていますが)

2着5万円で買えるものと1着10~15万するもの、またそれ以上の数十万するものなどが「オーダースーツ」というカテゴライズのもとで同列に扱われるのは、「自動車」というカテゴリーで国産の軽自動車とアストンマーチンのセダンを同列に見るようなものに感じます。

長くなりましたが私はこうしたことを踏まえ、「スーツをオーダーしたことがあるけれども、仕上がりに満足していない人」にこそ弊店に来ていただければと思っています。

せっかくスーツをオーダーで買ったのにサイズ感がいまいちだなぁとか、思ったより着心地がよくないなぁとなってそれ以降オーダーはしていないというような人、いらっしゃいませんか?

ぜひ一度、弊店を覗きにいらしてください。