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大阪肥後橋のTailor Armory

Tailor Armory

スーツのデザインのバランスについて

前回のブログから三ヶ月が経過してしまいました。

私がブログ更新をサボっていた間にやかましかった蝉の声はいつのまにか鳴りをひそめ、朝夕の冷え込みは確実に秋の到来と冬将軍の足音を聞こえさせるようになりました。

季節は、歩みを進めています。先週私は35歳の誕生日を迎えたのですが、こないだ34になったばかりなのにまた一つ歳を取るとはどうもおかしな話です。年々時が進むのは早くなっているように感じます。

感覚的にはもう明後日ぐらいには年の瀬を迎え、普段まったく流行りのJポップを聴かない私は紅白を観て、うどんチェーン店の有線で何気なく耳にしている歌声との答え合わせをするのでしょう。

さて、前置きはこのぐらいにして、本日は弊店のスーツのデザイン、その各部分のバランスについて留意している点を書こうと思います。

※以前書いたネタの加筆修正・再投稿です。大事なことなのでもう一回書きます。

「いいスーツ」とは何なのか。その答えは人それぞれだと思いますが、スーツの各デザインにおけるバランス、その黄金律のようなものは存在します。

私が考えるバランスの良いデザインをご紹介いたします。

①ゴージラインがシャツの襟の真ん中あたりから出ている

ゴージラインとは、ジャケットのカラー(上襟)とラペル(下襟)の切り替えのラインのことをいいます。

ゴージラインが高い位置にあるとクラシックでかしこまった印象になり、低めの位置にあると寛いだ印象になります。

弊店のもの(プレミアム仕立て)は高めでも下に向け少し角度をつけ、かしこまり過ぎないようにしています。

また、シャツの襟の真ん中あたりの位置からゴージラインが出るようにすること、そしてシャツの襟の開きの角度とゴージラインが水平になるようにすることも大事です。

②胸ポケットの4分の1程度を覆うラペル幅

ラペル(ジャケットの下襟)は細いと若々しくシャープな印象、広めのラペルはクラシックで重厚感が出ます。

弊店のものは基本的にワイドめだと思います。(細くも太くもできます) ラペルはブランドや店ごとのテイストで幅に違いがありますが、胸ポケットのサイズは(ほぼ)違いはありません。ポケットチーフを入れるのにちょうどいい深さと幅に、ファッションテイストはあまり関係ないからです。

この為ラペルの幅が細く胸ポケットの位置と離れてしまうと、ポケットのみが浮き立ってみえてしまいます。好みはあると思いますがバランスとしては胸ポケットの4分の1程度を覆うぐらいのラペル幅が綺麗だと思います。

③一番下のボタンの位置が両サイドのポケットの上端の延長線上に等しい。

写真のスーツのポケットはスラント(斜め)になっていますので傾斜の真ん中の位置でボタン位置を取っています。

ジャケットのフロントボタンは、(三つボタンの場合)真ん中のボタンが一番内側にあり、上下のボタンはそれより外側についています。これは人間の身体の曲線に合わせてのことです。

前裾のカットが流れるような曲線を描いているなかで、手を入れやすく、見た目もエレガントなポケットの位置は必然的に決まってきます。

④ジャケットの袖口からシャツの袖が1.5センチほど覗いている

「袖丈は短めがお好きですか、長めがお好きですかなどと客に尋ねる販売員は信用してはならない。」「その人に合った袖の長さは、一つしかない。」(男の服装術/落合正勝)

ジャケットの袖口からシャツの袖がワンフィンガー覗いているのがいいというのは、古来からスーツの着こなし紹介記事などで必ずと言っていいほど書かれていることです。

これが最適なバランスなのは事実ですが、シャツは縮みます。クリーニングであれ家庭洗濯であれシャツは必ず、(特に首と袖口が)縮みます。長く着ているものであれば袖の長さで2センチ以上短くなる場合も。

ここが受注の際に難しいところで、お客様がスーツとシャツを共に注文してくれるとは限りません。スーツのみの受注の場合は、お客様が着ているシャツの袖口の状態を見て、また購入からどれぐらい経っているかなどを伺い、購入時からどの程度縮んだかを推測します。

着ているシャツに合わせてそのシャツの袖口が覗くようにジャケットの袖丈を設定すると、見誤る可能性があるからです。

シャツも共に受注する場合でなかったら、袖口は0.5~1センチ覗けば十分かな、ぐらいで見ます。

また弊店で継続的にシャツの注文をされている方であっても、一番古いものと最新のものでは袖の長さは変わってきています。

袖の長さの好みは聞きませんが笑、それ以外の部分を色々お聞きして最適な長さを割り出してお仕立ていたします。

※上記はあくまで目安です。個人の好みや体格によって最適なバランスは変わります。

また、これらはあくまで判断基準の一つであり、この基準に当てはまっていないからといって、それがいいスーツではないのかというと決してそんなことはありません。

私が弊店のスーツの仕立てに対してこだわっているバランスと捉えてください。

それでは、また次のブログで。次回までに三ヶ月も経たないようにいたします。

かしこ