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大阪肥後橋のTailor Armory

Tailor Armory

スーツの背中の話

皆様こんにちは。肥後橋の小さな仕立屋Tailor Armoryの森田です。

ジャネット・ジャクソンを聴きながらこのブログを書いています。

今日は朝一番から、とても緊張するスーツのお渡しがありました。

新規採寸の場合緊張しないお渡しなんてないのですが、

本日のお渡しの方はその後に某TV番組収録があり、仕上がってきたスーツを着てそのまま行くつもりです!と言われていたのです。

工場から納品されてすぐに検品してご連絡したのが昨日のことです(笑)

TV番組って?放送日等詳細はまた後日に・・。

弊店の仕立ては仮縫いなしの一発納品ですので、購入時にミリ単位で入念に採寸を行ないます。お身体各部分の寸法は言わずもがな、身体のクセや歪み、骨格や筋肉のつき方なども見て補正を行ないます。

サイズゲージ(採寸用に各サイズでご用意したスーツ)を着ていただいての調整ですので、大きく違うことになる可能性は低いですが、それでもやはりセーフティネットなしの着用日当日お渡しはリスクがあるので避けたいところです。

特に弊店は私が一人でやっていますので、万が一私が採寸伝票に記入ミスでもしようものなら、誰も修正してくれないままそれで仕上がってきます・・(笑)

つらつらと書きましたが、結果は非常に綺麗な仕立て上がりで、ご満足いただけました。放送が非常に楽しみです。

さて、お渡しの際にご本人にも話しましたが、私は、採寸の際とお渡しの試着の際に、特にジャケットの背中とパンツのお尻を見ています。

これは、仕立ての良し悪しを左右する重要なポイントであると同時に、ご本人からは見えない部分だからです。

本人から見えない部分ということは裏を返せば、ごまかそうと思えばごまかせる部分ということでもあります。出かける前にその日の服装を鏡の前でチェックする人はいても、合わせ鏡をして背中やお尻のシルエットをチェックする人は少ないと思います。

小学生の時に、人の背中にシールを貼るイタズラをやりませんでしたか?前に貼っていればすぐ気づくのと一緒です。(この説明いらないですね。)

背中に吸い付くようなフィッティング。「背中で語る」とか「背中を見て育つ」という言葉があるように、また、スーツを日本語で背広というように、古来から男は背中で何かを証明しなければいけないようです。

(相対している私が半目になっている気がしますが、拡大すると目が細いだけなのがわかります)

ごまかそうと思えばごまかせると先述しましたが、弊店のフィッティング用の鏡は三面鏡になっています。

これは開業準備の過程でお世話になっている方に三面鏡の導入を勧められ、ほうぼう探し回って手に入れたものです。人の意見を聞かないことには定評がある私が、素直に意見を聞く数少ない人です(笑)

ともあれ、採寸の際、お渡しのフィッティングの際にはこの三面鏡を活用して背中もしっかり見させていただきます。

店内のトルソーも、眼下の土佐堀通を睥睨するようにお客様に背中を向けて立っていますが、これもクオリティの自信の表れと捉えていただいて構いません。

弊店はArmory = 武器庫です。武器を身につけた男が無防備な背中をさらしているのですから、武器への絶対の自信と背中を向ける相手への信頼がなければできません。